2017年 12月 09日
漆と革 |
今日の金沢は”今のところ”良い天気でホッとしています。
昨日は、一昨日に行ったY様の仮縫いについてのダイキの報告を受けたり、いく
つかの靴調整や加工をダイキと行っていたら閉店時間になりました。ブログ原稿
はタイトルだけ書いて止まっていました。
今週の火曜日の今年最終のミーティングは、まず「え〜っ!ジェームスさん髪切
った!!」と高野の驚きから皆んなが揃いました。今回は小林さんが出張でお休
みでしたが、雑談がいつも以上に盛り上がり、和やかな雰囲気で時間を忘れまし
た。(ちゃんとしっかり仕事をしましたよ!)
夜の忘年会は皆んなのリクエストで○吉八(まるきちや)で行い、コース料理で
お腹を満たしながら、皆んな好きな飲み物を頼んで話に花を咲かせました。
今年も皆んなのお陰でたくさんのお客様と繋がり、御利用頂く事が出来ました。
昨年の10月の試作完成から、再々度改良したレディースのファーストモデルは
1年以上を経過して、ようやく製作出来る段階になり、それを私達は待っていま
す。来年は、そのレディースの他にも新しいサービスの開発に向けて既に動いて
います。
今回の出張は、東京ミーティングの他に「東京レザーフェア」も仕事の目的にあ
りました。フランスのタンナー、ドゥ・ジェルマンのBruninさんとソールメーカ
ーのエベアのBriceさんとお会いして仕事をしました。
Bruninさんには、先日届いたスポルトレザーの御礼と、会場で見つけたカーフや
スエードの在庫確認をお願いしました。また会場で見つけた大阪の問屋はたぶん
初出店で、私は以前ヌバックを取り寄せた事のある会社でした。そこでは今の”白
ヌメ”に代わる”新白ヌメ”を見つけ、サンプルカットの入荷を楽しみにしています。
また、会場で”漆”の大きな文字に出逢い、兵庫県のタンナーの「黒桟革(くろざん
がわ)」に興味を惹かれました。このタンナーは剣道の防具に長年関わっていて、
それに使われる「黒桟革」を研究していました。
私は昨年の5月から、輪島塗伝統工芸士の九尾くんに話を持ちかけ、革靴のトゥに
漆加工する研究を始めました。私達のお客様がエルメスの本店でジョンロブの方か
ら「私達の求める”黒”はジャパン(漆)だ!」と聞いたとのお話から、ずっと漆の
黒を注意して見て来たのです。もちろん、輪島が故郷の私がカールフロイデンベル
グの黒を”美しい!”と感じた事は自然な事で、お客様の評価も同じでした。そして、
以前から黒漆を靴に利用出来ないか模索していて、「トゥの傷に対しての耐久性と
乾漆の黒の美しさは繋がるのでは?」という発想に辿り着いたのでした。
九尾君は私が持ち込んだ革(ワインハイマー・ボックス黒)に工業試験場のデータ
から数パターンの漆を使って実験してくれ、今年の6月頃に私が30年以上前に購
入したキャップトゥに試験加工してくれたのでした。
そして、その靴をご覧になった富山の「私を犯罪者と呼ぶ」T様が「”黒桟革”みたい
だ!」とおっしゃり、私はそれを紙に書いて店の壁に貼っていたのです。そして、
その革に出逢う事が出来たのです。私はこれから、この加工が人の役に立てる様にも
っと研究していきたいと思っています。御常連のK様は「パーティにいいね!」とお
っしゃるので、大きめの数色のLG粉を使った「星空加工」を417のキャップトゥ
バージョンで実験する予定です。
室町時代より「漆皮」という技法で革と漆は加工されて来ました。「美」と「用」の
一致を人の手で作りだして、人に喜ばれる事に繋がれば、それぞれの誇りは保たれ、
大切なものへの愛着が生まれるのではと思っている私です。
by kokon-y
| 2017-12-09 18:07
| Diary