2017年 06月 24日
デザインとフィット感の関係 |
石川県はつゆに入りましたが、今日もカラッと晴れて暑いです。
昨日、午前中に自転車で靴修理職人のNさん、金沢駅、そしてリュックの修理に困っ
ていた「コテージ」のトニーを訪ねて、KOKONの向いの「ファッション・リフォー
ム」をお勧めして店に出勤しました。店に入ると汗が噴き出しました。
「デザインとフィット感の関係」は誰もが「それはあって当然です。」と思ってらっ
しゃるでしょう。それでもフィット感の良いデザインを探して選ぶより、素材の柔ら
かさや靴の軽さ、そして気に入ったデザインを条件に選ぶ事が多いのではないでしょ
うか。
私達の店では、日常、靴の脱着が多い方でもフィット感の良い靴であることを求めら
れる事が多いです。紐付きのデザインでもジャストフィットに感じて頂く為に、(お
客様も求められて)半敷を調整してタイトにしたり、骨の当たる部分をラストの乗せ
甲でふくらせたりしますが、紐無しのデザインは特に見極めと、調整が必要です。今
対応しているI様は3月に大和デパートでオーダー頂き、乗せ甲調整で416のアノ
ネイ・ボカローカーフを製作致しました。アーチが高く、ジョーワークスで調整製作
した416を店で甲上げと履き口広げを行い、足裏のアーチクッションを(革半敷の
下に)セットして大和デパートのフロア責任者のYさんに連絡しました。しかしYさ
んから外商担当の方に靴が渡されI様に届けられましたが、後日、I様から「甲が痛い
。」とご連絡があり外商担当から大和デパートに靴が戻されました。
私はYさんに内容を伝えられ、416をプラス調整しました。そして2週間後程して
Yさんに連絡をすると後日I様は奥様と一緒に来店下さいました。
I様に足入れをして頂いたところ、甲が少しきつい感があり、ソックスが5本指の厚
い生地で、歩いて来られたせいか、汗ばんでいらっしゃいました。履かれていた靴は
マッケイ製法の柔らかいキッド(子山羊)仕様で、青い分厚いインソールが入ってい
ました。「あんたが大丈夫と言うなら俺は履いて帰る。」とおっしゃるので、私は少
し考えて「履いてみて下さい。」とお伝えして、I様は履かれたまま奥様と一緒に店
から呼んだタクシーでお帰りになられました。奥様はモカシンが気に入られ、とても
和やかにフィッティングをする事が出来ました。
しかし後日,Yさんから連絡があり、I様があれから2日履かれても甲が痛く、オーダ
ーの時に伝えたコツコツというヒール鳴りも無いとYさんに電話があった事を知りま
した。Yさんは外商時代にI様の担当をされていて、I様から信頼を頂いています。
Yさんはオーダー会にI様を誘われ、KOKONの靴がいかに良い靴であるかお話し下さ
り、「俺の最後の靴を頼むぞ!」とI様はオーダーに挑んで下さいました。私はYさん
がI様に選んだ416は強くタイトなフィット感がお好きな方向けで、I様には少し難
しかったのでは、と少し考えました。しかし、他のお客様を接客していた私にはYさ
んのサポートは大変有難く、I様のお好みのデザインであれば全力でご希望に答える
のが私達の仕事なのです。
後日、Yさんが来られ、私達と一緒にI様をお待ちしました。I様はお一人でタクシー
で来られ、早速店内に入られ靴を脱がれながら、「左は良いんだけど右が、、、痛い
、痛い!」とおっしゃり、右足の靴下を脱がれて足を見せられたところ、第3甲の内
側の骨の出ている所が赤くなっていました。
I様は私がYさんにお伝えした”薄い、滑りの良い靴下”を履いて下さっていました。そ
れは奥様が買って下さったそうでした。「履いて下さってありがとうございました。
右足の甲の出ている骨が当たるんですね。わかりました!」「ぎゅうっと締まって動
かないのは良いよ!それとさ、ふまず(アーチクッション)が前過ぎるよ!左足(甲
)もまだ伸ばしてくれ!」私はすぐにアーチクッションの着いた革敷きを剥がし、ク
ッションを少し手前に仮留めして、半敷も上から仮留めして履いて頂きました。「う
ん、これで良い!」とI様は唸りました。
その後、店からタクシーを呼び、I様は私がお貸しした20年以上使用の柔らかくな
ったベルギーラインの靴を履かれて、帰られました。Yさんは終始I様に気を遣われ、
I様が帰られた後は私達に気遣いされました。Yさんは週末のお忙しい時に時間を作っ
て下さいました。I様もYさんに感謝されて「悪かったな!」と声を掛けられ、後でY
さんは「Iさんは恥ずかしがりやだから。」と笑顔でした。
”この方達の為に今から完璧な仕事をしなければならない。”と心の中に熱いものを感
じた私でした。
グッドイヤーウェルト製法のコシの強い丈夫な靴は、ストレッチ調整をいくつかの段
階で行わなければなりません。少しずつ慣らして下ると、それが良いのですが、スト
レッチを完璧にするにはこれからの段階が勝負でした。
私は右足の甲の内側にプラス調整したストレッチャーを入れて、左足の甲と履き口も
伸ばし調整を開始しました。
そして、2週間後の先程、I様が来店され、調整した416を履いて頂きました。少
し歩いて頂いて、私が「いかがですか?」と尋ねると「まだ履いてみないと判らん!
」とおっしゃり、タクシーを呼ぶ様におっしゃいました。その間にI様と少しお話を
しました。
「あんたのお手並み拝見や!」I様は笑顔でした。Yさんが昨日持って来られたI様へ
のプレゼント(ソックス)をお渡しして、タクシーをダイキと2人でお見送りしまし
た。そしてYさんに報告と416を履かれたI様の足元の写真をメールで送りました。
「俺はしつこいぞ!」「いつでも何でもおっしゃって下さい!」I様との会話のやり
取りを思い出しました。
「あっ!お貸しした私の靴は、、、まぁいっか!」またお会い出来る日があると心の
中で確信している私でした。
調整する。
ライニングの前は柔らかい合タンの白ヌメ。
by kokon-y
| 2017-06-24 17:42
| Diary