2017年 08月 08日
コ・ワ・テ・ブを作る人達〜ブラシ職人編〜(後編) |
「コ・ワ・テ・ブへの道」
3月の東京ミーティングの翌日、偶然見つけた宮川刷毛ブラシ製作所で手植えの
馬毛と豚毛ブラシを10個ずつオーダーし、スエードブラシも購入した私達でし
たが、実はその時こんな事がありました。
靴ブラシに使っている朴木(ほうのき)の木地が在庫分以降は栗の木等、他の
木材に代わる事と(値段も上がる)、専門の木地師がいなくなり、仏具等の木地
師を紹介してもらったり、上手くやれる相手を捜しているというのです。まだス
トックは在るというもののお二人の話しを聞いて大変だな〜と思いました。
また店内の”蒔絵筆”のパンフレットや漆教室、金継ぎ教室のパンフレットが目に
入り、「実は私、輪島の出身で、明日輪島に行くんです!」と言うと、お二人は
金蒔絵を入れた小作品を見せてくれたので、私は九尾の作った夜行貝と金彩のボ
ールペンを見國さんのバッグから出してみせました。お二人の顔を見て「(工芸
が)お好きなんだな〜。」と私は思い、お二人も私のボールペンやバッグを見て、
「あら〜〜!」と私も好きでハマっている事に気付かれたと思いました。
そして私が輪島塗伝統工芸師の九尾の事や輪島塗では昔から朴木を使用していて、
朴木屋という専門木工所に朴木地師がいる事を話しました。そうしたら、娘の久
美子さんが嬉しそうに、仕事場にあった箱の中から、なんと拭き漆仕上げの靴ブ
ラシを出して来ました。「何度か塗ってまだ途中なんだけど、、、。」と植毛面
を塗らなかった物等いろいろ見せてくれました。
私は翌日輪島に行き、九尾に凄いブラシ屋と偶然出逢った事や拭き漆のブラシの
話しをしました。そして宮川さんの漆は自分達の使っているのと違うかもしれな
いと彼は言いました。
4月の東京出張での訪問時に20個の出来上がった靴ブラシを見せて下さり、私
はもう20個の製作をお願いしました。そして出来上がったブラシを輪島に持っ
て行き、九尾に拭き漆を頼みました。馬毛の茶や白はとても気を遣って漆塗りさ
れ、翌週実験したのを見せてもらい3度塗りで良いと判断して、翌週までに全て
拭き漆をしてくれました。
それからレフティ見國さんに以前預けてあった焼印を送ってもらい、電熱機を購
入して、ブラシに加工する準備をしました。
そして5月の東京出張での訪問の時にも20個の出来上がったブラシを確かめさ
せて頂き、輪島で拭き漆加工をした事や靴ブラシに対してのお客様の反応や思い
について話していたら、「ココンさんの方で木地を加工して持ち込んで頂いたら
私達で植毛しますよ。植毛面に先に漆を塗って、それから木地の大きさは、、、
。」と久美子さんが木地の穴の入った型紙を紙にコピーして下さいました。宮川
さんの方でも新しく出来た栗の木地が思う様でなかったみたいで、「こんなにフ
シを入れたらダメだと言ったのに、、、。」と木地の難しさが私達にも伝わって
きました。私達にはオリジナル製作への道が開けることになり、宮川さんの心の
入った提案には一瞬耳を疑った程有難く、嬉しい気持ちでした。
その後、輪島で木地を作り、植毛面に漆を塗って6月に東京へ持参してフタの大
きさが合っていなくて、フタだけを宮川さんの在庫を使って、植毛面とフタ付け
をして頂き金沢に送って頂きました。それまでにはいろいろな事があり、職人と
の行き来の苦労を改めて学びました。そして拭き漆は九尾が「もっと艶を出した
いから。」と4度塗りした仕上げがとても美しく、私の焼き印仕事は木箱のフタ
に移りました。
3月の宮川刷毛ブラシ製作所との出逢いから4ヶ月、金沢、東京、輪島を行き来
して、たくさんの御縁と御協力を頂いてKOKONオリジナル輪島拭漆手植え靴ブ
ラシ(コ・ワ・テ・ブ)は完成しました。特注の4cm馬毛等の素朴仕上げも作り
ました。
今月の10日に宮川さんを訪れ「取材をして良いですか?」と主旨をお話すると、
お母さんも久美子さんも快く木地を出して来て、実演をお二人で順番にして下さ
いました。この日は、つぼ切り穴が良くない時は木地が割れるお話も伺いました。
お母さんの手はとても速く、写真に写せませんでした。久美子さんはそこまで植
毛が速くありませんでしたが、「つぼ切り」を全て一人で行っています。宮川さ
んでは長年使用されたブラシ刷毛の植毛替えも受けています。
この日は最近購入された大きなブラシを「やっぱり1cm短くして!」という依頼
にその場で作業してお渡しする場面がありました。その為に、予定の仕事用に調
整した機械を調整変えしました。そしてお客さんが帰った後に苦笑いした久美子
さんが素敵でした。
物事や御縁には因果があります。宮川さんとの出逢いは江戸屋の因が全てではあ
りません。それ以前からの因から頂いた江戸屋の果でもありました。因果は積み
重なり繋がっています。
私はいつも果に喜び、因を愛おしく思います。そして私はいつも両方を大切にし
ています。私に与えられた因果は、実は私だけのものではありません。それによ
って繋がりが広がり、何かに役立つ事が自分の生き甲斐だと感じています。会え
ば嬉しい人がいる事が幸福に思います。作られた”もの”からそんな温もりを感じて、
同じ様に嬉しい気持ちになって頂けたらどんなに幸せでしょう。
今回の取材は半年を思い返しながら、こんな想いになりました。
次回のコ・ワ・テ・ブを作る人達〜漆職人編〜をお楽しみに!
から、、、。」と手早く取り除いて、適量を束ねて植えていく。
お母さんの手は実に速い!
この日は私達の為に”たぶんダメな木地”を出して植毛の実演をして下
さいましたが、途中で「やっぱりダメだ。割れる。」と手を止めた。
靴ブラシはクリームで毛に栄養が入り長持ちするそうだ。
シアバターやコラーゲン等の天然成分ですね。
by kokon-y
| 2017-08-08 19:05
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